卵や乳製品にアレルギーを持つ人たちの間だけではなく、マクロビオティックに代表されるベジタリアン、オーガニックやナチュラルフードを好むヘルシー志向の消費者の間では、乳製品や卵などの動物性原料を一切使用していない食品(VEGAN)が選ばれている。また、欧米では既に常識となっているグルテンフリー(GLUTEN FREE)食品もまた、ここ最近日本でもその要素をとりいれた食品が、じわりじわりと増えてきている。

欧米ではベジタリアンやヴィーガン人口も多いため、こういった食品のニーズが日本より高く、もはや特別なものではなくなっている。カフェやレストランで、VEGANやGLUTEN FREEメニューである表示がされていたり、パスタやパンなど、選べるようになっているお店もあるほどだ。小売店においては、パッケージ自体にマークをつけた商品が流通しているのはもちろんのこと、オーガニックや健康食品の専門店以外、一般店での取り扱いも多い。特にオーガニックスーパーなど専門店での扱いはもはや常識となっていて、コーナー展開やプライスカードでの表示など、アイキャッチサインでわかりやすく伝えるための工夫もされている。

海外のオーガニックスーパーで、特にしっかりと表記されているのは、「VEGAN(ヴィーガン)」「GLUTEN FREE(グルテンフリー)」「LACTOSE FREE(ラクトースフリー・乳糖不使用)」の3つ。ちなみに、以前に多く見られたFAT FREE(ファットフリー・油不使用)やSUGAR FREE(シュガーフリー・砂糖不使用)も、個別の商品パッケージにはあっても、売り場展開での表示はほとんどない。

こちらで紹介している写真は、ドイツのオーガニックショップの売り場のものだが、もはや、オーガニックの認定の有無についてはわざわざ表記などしていない。パッケージを見ればわかる。それほど、オーガニック、ビオの認証マークが国民に認知されているということの表われでもある。

VEGAN(ヴィーガン)の製品には、大体「V」の文字や、イメージのグリーンカラーのアイキャッチを使っているプライスカードが多いようだ。DAILY FREE(デイリーフリー・乳製品不使用)や EGG FREE(エッグフリー・卵不使用)は、たいてい両方を使用しないVEGAN(ヴィーガン)であることが多いため、あえて個別に表示するまではしていないよう。また、冷蔵品や冷凍品のヴィーガンコーナーのあるお店では、ドアにもVEGAN認証マークをしてコーナー作りをするなど、とてもわかりやすく探しやすい売り場となっている。

一方の日本と言えば、、、まず、VEGANのほうは、精進料理、マクロビオティック食の流れから、動物性素材を使用しない食べ物は結構流通している。しかしながら、コーナー作りやプライスカードでのアイキャッチ表示などをしているお店はほとんどない。牛乳の代わりに豆乳を使うなどの商品はあるものの、ベジのマークなどをしっかり提示している日本の製品はあまりない。LACTOSE FREEの表示はほぼ皆無と言っていい。ベジタリアン、ヴィーガンの日本人なら、原材料表示を見ればたいてい判断がつくものの、外国の方にとっては自分の求めている食品を日本で探すのは困難だ。

次はグルテンフリーについて。ドイツの店頭では、グルテンフリー食品にはマークがついていたり、特設コーナーを設けているところが多い。GLUTEN FREE(グルテンフリー)のマークは、黄色をベースに、麦の穂をイメージしたイラストにクロスするような線で、グルテン不使用であることが一目でわかるようになっている。文字の意味が分からない外国の人でも、一目瞭然だ。

一方の日本では、グルテンフリー商材についてはいまだ、輸入商社の方でもなかなか取扱いに踏み出せずにいる、という状況だ。そのため、そもそも流通している商品が非常に少なく、小売店ではコーナー化もされず、プライスカードへの表記などもされないままだ。以前書いた記事、2008年なので既に7年前になるが、台湾のスーパーでも、既にグルテンフリーを含む売り場の展開をしているというのに。それほど、海外に比べて日本は遅れているのだ。

わざわざ「グルテンフリー」を謳ったものでなくても、オーガニックショップで通常扱っている商品の中に、実はけっこうあるグルテンフリー食(小麦不使用製品)。小麦を使用せずにつくる「たまり醤油」、つなぎに小麦粉を使用しない「十割そば」、おやつの「米ぽんせん」や「せんべい」(調味料に醤油などが含まれないもの)、ポテトと油、塩だけの「無添加のポテトチップス」なども、グルテンフリーだ。玄米で作られた「ビーフン」や「フォー」などもそれにあたるだろう。「米粉」や「そば粉」「キヌア」「ひえ」「あわ」「きび」なども、小麦粉の代わりに使うグルテンフリー料理の素材としての提案も可能だ。

それでも、なかなか店舗での売り場づくりや情報発信、取扱いが進まない理由は、

  1. 日本人には、ベジタリアンが少ないから需要も少ないのではないか?
  2. 米を主食とする日本人には、セリアック病などグルテンが身体に合わない人が少ないと思われ、結果、あまり需要がないのではないか?
  3. 日本ではなぜか「グルテンフリーダイエット」・・・という広まり方をしつつあるから、結局一過性のものとなり、定着しないのではないか?
  4. 原材料に麦を使用していなくても、製造工場の別ラインで使用することもあり、コンタミの不安がある。表示が免除される調味料等のキャリーオーバーなども考えられ、万が一、何か起こった時のことを考えた、安全管理体制やリスク管理が必要だ。

こんなところだ。

現在日本では、そもそもグルテンフリー認証に関する基準、認証機関がない。よって、国産の製品などについては、表現などに慎重にならざるを得ないこともある。しかしながら、欧米を中心とするグルテンフリーのマーケット、需要を考えれば、残念ながら日本が対応に遅れをとっているのはあきらかだ。

日本在住や滞在中の外国の方、ベジタリアンやヴィーガンの方、そしてグルテンフリー食品を求めている方などに、もっとわかりやすい表示や売り場づくりを、そして商品開発を、日本もそろそろとりかからなければ・・。

この記事を書いた人

オーガニックプレス編集長 さとうあき

インターネットが急速に世に広まりつつあった2002年、長年身を置いてきたオーガニック業界からEC業界へと転身。リアル店舗時代からIT化時代の変遷、発展への過程を経験し、独自の現場的視点をもつ。2010年、業界先駆けとなる“オーガニック情報サイト”誕生を実現した。「オーガニックプレス」はその確かな目で選択された情報を集約し蓄積。信頼性の高いコンテンツを提供し続けている。

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