近頃、日本食スーパーマーケットに行かなくても、敷地面積が広く品ぞろえが多いローカルのイギリス大手スーパーマーケットで豆腐を購入できるようになりました。主な理由としてヴィーガンフードの需要が年々高くなっていること、健康志向が強まっていることが挙げられるのではないでしょうか。

イギリスに流通している豆腐とは?

<イギリスメーカーの豆腐と価格>
まず、イギリス大手各スーパーマーケットのオンライン版で一般的な豆腐の種類と価格を調べると同時に、1983年に初めてオーガニック食品を販売した大手チェーンスーパーマーケットのWaitrose(ウェイトローズ)で豆腐売り場を見てきました。

前回のコラムで取り上げた日本食材を提供するブランドClearspring(クリアスプリング)の豆腐は絹ごし豆腐となり、同社の味噌や海苔などと一緒に日本食品のコーナーに置かれています。こちらの価格は300gで£1.75(£5.84/kg)です。

また、冷蔵のヴィーガン食品の棚では、30年以上に渡りファラフェルやベジタリアンソーセージを作っているメーカーのCauldron(カウルドロン)の豆腐に並び、新生ブランドのThe Tofoo Co.(ザ・ トーフー・コー)の豆腐が陳列されています。価格は、Cauldronが396gとやや大きめで£2.00(£5.06/kg)となり、The Tofoo Co.は280gで£2.00(£7.15/kg)です。これら3つブランドは、全て有機栽培された遺伝子組み換えでない大豆を使用しているオーガニック豆腐です。

<パッケージ>
次に皆さんが気になるであろうパッケージを見てみましょう。
Clearspringの豆腐は、牛乳パックのような紙容器に入っておりハサミで切り込みを入れて開封するタイプです。Cauldronは、日本のスーパーマーケットで目にするプラスチック製の容器に入った豆腐でフィルムを剥がすタイプです。そして、The Tofoo Co. は、紙素材の箱を開けると固形状のチーズを包むようなパウチ加工されたパッケージに豆腐が入っています。

<日本のメーカーの豆腐>
一方、日本メーカーの豆腐も輸入および拡販されています。徳島県の「さとの雪豆腐」は、ご存じでしょうか。この豆腐は、アジア食品を取り扱う専門スーパーマーケットのみならずイギリス最大シェアのスーパーマーケットTesco(テスコ)で購入できます。こちらは、日本製の国産大豆を100%使用している豆腐で日本人が求めている味、そして絹ごしのやわらかさです。そのため、お味噌汁や冷やっことしても調理しやすいです。

輸入食品ですが、価格は300gで£2.00(£6.7/kg) とイギリスメーカーが製造している豆腐の価格帯と大きく開きはありません。

その他、オランダに工場を持つ森永乳業の豆腐をイギリスのスーパーマーケットシェア第2のSainsbury(セインズベリー)で購入できます。価格は349g£1.40(£4.12/kg)と安価ですが、残念ながらいずれもオーガニック豆腐ではありません。

イギリスの食品メーカー The Tofoo Co. について 

今回イギリスの豆腐メーカーThe Tofoo Co. に連絡をしたところ、快くインタビューに応じてくださいました。

会社取締役のLydia(リディア)さんのお話によると、「日本のような手作りの豆腐が皆無であること」そして、「豆腐の味と品質に関して、市場にギャップがあると感じていたことがキッカケ」となり、2016年10月にイギリスの大手オンラインスーパーマーケットOcado(オカド)とTescoにてローンチしたそうです。

The Tofoo Co. の原料を見るとNigari(にがり)という表記があります。にがりは日本語なので日本製のにがりを使用しているのかと思いきや、なんと「イスラエルの死海から採られたニガリを使用」しているということです。これには少し驚きましたが、死海の水は、にがりの主成分である塩化マグネシウムを豊富に含んでいるので、豆腐作りには意外と適しているのかもしれません。

そんなThe Tofoo Co. の豆腐は上記で紹介した一般的な豆腐の他に3種類あり、「くん製にしたスモーク豆腐」、「レッドチリやレモングラスパウダーなどで味付けされた豆腐」。そして、すぐ調理できるように、「スモーク豆腐をサイコロ状に切っている豆腐」です。実は、くん製や味付き豆腐は珍しくありません。例えば、ドイツのTaifun(タイフン)という豆腐メーカーからは、スモーク豆腐の他にバジルやオリーブを使った豆腐があります。恐らく豆腐そのものの味気なさにアレンジを加えているのでしょう。

豆腐の食べ方はさまざま

豆腐は、肉・魚・チーズの代替として調理できます。イギリスをはじめ、ヨーロッパのメーカーが作る豆腐は木綿豆腐よりややしっかりとした硬めの豆腐が多く、オンラインや雑誌でレシピを見ると炒める、焼くという方法で調理をする豆腐レシピが多いような気がします。主にヴィーガンレシピとしてブロッコリーやパプリカなどを醤油や中華系のソースと炒め、白米や玄米に添えた一品をよく目にします。アジア料理は欧米人にも人気があるので、家庭でも作りたいという人も多いことでしょう。

面白い食べ方としては、ピザにのせるモッツァレッラチーズの代わりに豆腐をスライスしてオーブンで焼く。または、フライパンで軽く焼いた豆腐をスライスチーズの代わりにサンドイッチを挟む。日本人の感覚では、なかなか思いつかないようなレシピですね。

一方、絹ごしのやわらかい豆腐は、チーズを使用しないチーズケーキに使われたり、プロテインパウダーの代わりに豆腐を野菜や果物と一緒にスムージーに入れるというレシピもあります。

豆腐の可能性は広がる!

肉の代替えとして豆腐を使用するということに触れましたが、ヴィーガンとまで行かなくても、肉を摂取しない食生活やヴィーガンプロダクトを好む傾向は広がりを示しています。

肉の代用としてマイクプロテインを使用し、ミートフリーのチリコンカルネやソーセージを販売するQuorn(クォーン)というブランドは、「2017年の売上が、前年に比べ、ヨーロッパでは27%、アメリカでは35%、同様にオーストラリアでも35%の増加を記録しいている」ということです。同社は、商品数を増やしたことが要因の一つとも言えるが、主な理由として、「環境、健康、そして倫理的な視点からベジタリアン、ヴィーガン、偶に肉は食べるがプラントベース(植物由来)の食生活を好む消費者がこの売上を押し上げているから」とQuornの最高経営責任者(CEO)が語っています。(出典: Business Green)

実際、1月に行われたヴィーガンを啓蒙するキャンペーン(Veganuary)では、前年比183%増の15万人以上がフォロアー登録をしたというほど、今後も市場の広がりを感じさせる数字です。(出典:VEGANUARY)

もし今後、自社の豆腐を海外で販売したいというメーカーさんがいらっしゃれば、ぜひオーガニックの大豆100%使用し、日本食としてではなくヴィーガンフードとして勝負をかけてみてはどうでしょうか。

この記事を書いた人

鈴木 聖佳(すずき さとか)

約8年間、東京にて化粧品業界商社兼メーカーに勤務、Eコマース、カタログ通信販売のマーケティング&法人営業に従事。2012年よりロンドンへ移住し、3年弱、金融業界で勤務。そして、日本と「繋げる」・日本に「伝える」を仕事にし、現在は、ネゴシエーター・フリーランスライターとして活動中。特にオーガニック・ナチュラルプロダクトの食品・化粧品に関するマーケットリサーチ、インサイドセールス、ライティングをプロジェクトベースで行っています。

Bionatura&co
関連記事