フェイスブックやインスタグラムで情報をシェアすることが当たり前になった今、私たちは“シェアすること”そのものに楽しみを覚えるようになりました。その点に着目し、日常的な消費を寄付につなげる「ソーシャルコンシューム」をドイツ市場に根付かせつつあるブランドがあります。

そのブランドの商品が並ぶのは、ドイツ大手ドラッグストアチェーン「dm」の店舗。そのオーガニック食品コーナーで、ポップなデザインと白抜きの“share”というロゴが目を引くオーガニックチョコレートやオーガニックナッツバーが並んでいます。これこそがソーシャルブランドとして注目されている「share(シェア)」の商品です。

左側の青いパッケージの方がミルクチョコレート・右側の茶色いパッケージの方がブドウ&ヘーゼルナッツビターチョコレート(ヴィーガン)

左側のオレンジ色のパッケージの方がさくらんぼ&アーモンドナッツバー・右側の水色のパッケージの方がチョコレート&海塩ナッツバー

shareは2017年創業、ベルリン発のスタートアップ企業で、その名の通り“シェアすること”をミッションとし、社会貢献型の商品を次々に生み出しています。前述のオーガニック食品に加え、100%リサイクルペットボトルを使用したミネラルウォーターやハンドソープなどの衛生用品がラインナップされています。

出典:share

商品づくりは「1+1」の原則に則っており、share商品をひとつ買うと、飢餓や貧困で苦しむ人ひとりの助けにつながる仕組みになっています。寄付を“シェアすること”と言い換えることで、社会貢献になじみがない人でもSNSを楽しむように気軽に商品を手に取ることができるようにしました。

ミネラルウォーター1本は一日分の飲料水に。
ナッツバー1本は一食分の食事に。
ハンドソープ1本は1個の石けんに。
出典:share

また、個々の商品にはトラッキングコードがついており、自分の寄付が世界のどこで使われているのかリアルタイムに知ることができます。私が購入したミネラルウォーターの場合は、カンボジア北部の井戸建設の助けになっていると表示されました。

このようなアイディアに前述のdmや大手スーパー「REWE」が賛同を表明。Share商品はドイツ国内5,000店舗以上に広がり、初年度の売上は1,000万ユーロ(約12億円)を記録しました。

出典:share

shareでは各商品の売上の20%までをソーシャルプロジェクトに回しており、これを維持するためにもマーケティングには資金を投じていないそうです。独紙「Frankfurter Allgemeine」の取材に対し、創業者のStricker氏は「一番の広告はソーシャル思考です」と答えていました。

社会貢献型商品と聞くと、少し前なら堅苦しく、どこか野暮ったいイメージがあったものです。しかしこのshareはインスタ映えするデザインにシンプルな寄付の仕組みを組み合わせ、思わずシェアしたくなるコンテンツに生まれ変わらせました。

既存のオーガニック食品メーカーとは異なる切り口、異なる販路でヒットを生み出した今回のケース。デザイン性だけでなく、企業姿勢や商品の社会的価値にまで消費者の目が向き始めていることを教えてくれます。

今はただ良いものを作るだけでは売れない、作り手泣かせな時代ではあります。しかしオーガニック市場の拡大を追い風に、工夫次第でヒットに結びつく可能性はまだまだあるのではないでしょうか。

この記事を書いた人

神木桃子(こうぎももこ)

ドイツ在住オーガニックライター
オーガニック専門店を運営する会社での販売・バイヤー職、地域産品のコンサルタントや販売を行う会社での営業・バイヤー職を経て、2014年秋よりドイツに移住。商品企画から流通、販売まで幅広い経験を積んだエキスパートならではの視点で、ドイツのオーガニック&サステナブル情報を発信している。3歳になる娘を子育て中。

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