日本初上陸の、フランス発オーガニックスーパー「Bio c’ Bon (ビオセボン)麻布十番店」。無理に「本場のまま」フランス式にこだわるのではなく、日本らしさのある売り場づくりや売り方を取り入れているところが随所に見られた。

フランスの店舗と日本との違いについて一番わかりやすいのが、日本の弁当文化をリスペクトし、BIO(オーガニック)をその場で美味しく味わってほしいという想いから作られた、対面式のデリコーナーとイートインスペースだ。

青果売り場の魅せ方、販売方法(量り売り)に関しては、フランス式を導入しており、木箱の中に青果を入れて販売するスタイルでプライスカードはほぼ同じデザインだ。フランスビオセボンでは、大半の野菜や果物が常温で、包装されずに量り売りされていたが、日本の場合は葉物など鮮度が落ちやすいものの多くは冷ケースで販売。また、パック詰め、袋詰めされたものも販売している。それでも、セルフの量り売り製品をこれだけ大々的に導入するというのは勇気のいることだったと思う。

Bio c’ Bon (ビオセボン)麻布十番店 青果売場

フランスビオセボンでは、粒の細かいベリー類などはパックされているものもあるが、多くのものは袋詰めなどされずそのまま並べられていた。レタスや白菜、ケールなどの葉物も常温で並び、量り売りされていたのが印象的だった。ここまで環境にやさしい買い物スタイルを徹底するのが理想的ではあるが、日本でそのスタイルを実現させるのは、現実的にすぐには難しい。Bio c’ Bon (ビオセボン)第1号店となった麻布十番店では、最初からすべてをフランス式にするのではなく、現段階では日仏両方の売り方を導入している。

フランスのBio c’ Bon店舗

フランスの店舗では、とにかく有機加工食品のラインナップが充実している印象があって、シンプルなラックには上から下までぎっしりの商品が並ぶ。ラック設置数が多いのはもちろん、かなり高い位置まで棚が作られていて、天井近くまで売り場としてやストック置き場として活用されている。棚下のストックBOXもシンプルだがおしゃれだ。

プライスカードはすべてデジタル式のものになっていて、基本的に価格表示のみ。下に小さく発注用のバーコードや製品名が書かれているくらいだ。また、商品と商品の間の仕切りはあるものの、商品が手前に落ちてこないようにするための「こぼれ止め」が無かった。

日本の店舗で使われていたラックは、全く同じものではなさそうだが似ているものを使用。フランスほどの高さはないが一般的な日本の専門店の棚より高めのようだ。「エンド」は設置されていなかった。代わりに、棚に置かれている製品のカテゴリーサインが、フランス語と日本語で記載されている。

各棚の上部にも、さらに細かく製品カテゴリーを示すサインボードが設置されていた。親切心のカテゴリーの色分けも、消費者に伝わっていなかったり、かえって色が多すぎてくどい印象となることも。カッコイイかカッコ悪いか、おしゃれかそうでないかは人によって感じ方がそれぞれだが、コーナー表示の色使い、PC(プライスカード)のデザインやカラー、フォントなどちょっとした部分を変えるだけでも、雰囲気は変わると思う。


まだ日本のスーパーでは対応されていないところが多いが、注目のグルテンフリーコーナーが設けられているのはさすがだ。
※GLUTEN FREE (フランス語でSans gluten)

プライスカード(PC)は日本仕様だった。日本のオーガニック専門店に多い、製品の短い説明が書いてあるタイプのもの。特にフランス直輸入の製品などは、英語でなくフランス語の表記のものも多いので、PCに日本語説明をのせるのは必要だろう。

フランス発のお店なのでコーナー表示はともかく、日本の食品についたPC(プライスカード)の英語表示、もしくは多言語化については、是非業界に先駆けての対応を期待したい。

棚の手前にはもちろん「こぼれ止め」がある。特に瓶ものなど割れやすい物、液体物の棚には必須。地震の多い日本ならではとも言えるが、お客様が手に取った時、バッグや体が少しあたってしまった時など、割れて中身がこぼれてお客様のお召し物を汚してしまわないように、、、という、日本ならではの心遣いでもある。

日本製品のコーナーの前には、数週間ごとに企画変更する、いわゆる催事テーブルを設置。日本ならではの商習慣、季節の商品提案や、メーカーさんや生産者の方のデモンストレーションなどにも利用される。

大きな柱回りも催事コーナーになっていて、オープン直後はお勧めの直輸入品が並べられていた。基本的にこの店舗ではエンド陳列による季節の提案、おすすめ品などボリューム感を持たせた大量陳列ができるのはこの2か所だった。

海外ブランドが日本上陸する際に、スタイリッシュな世界観を日本で出すため、店舗や売り場の設計やデザインをそのまま導入するケースも多い。丸ごと海外のイメージのままにするべきか、現地化(日本化)したほうが良いのか?は賛否分かれるところではある。Bio c’ Bon (ビオセボン)の第一号店に関しては、100%フランスの輸入食品を販売するわけではなく、むしろ国産のほうが多い商品構成だ。日本の消費者に分かりやすく受け入れられやすい売場、売り方を考えつつ、日仏のバランスを考えながら柔軟に対応しているという点を、評価したいと思う。

この記事を書いた人

オーガニックプレス編集長 さとうあき

インターネットが急速に世に広まりつつあった2002年、長年身を置いてきたオーガニック業界からEC業界へと転身。リアル店舗時代からIT化時代の変遷、発展への過程を経験し、独自の現場的視点をもつ。2010年、業界先駆けとなる“オーガニック情報サイト”誕生を実現した。「オーガニックプレス」はその確かな目で選択された情報を集約し蓄積。信頼性の高いコンテンツを提供し続けている。

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