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古代穀物ディンケル(スペルト小麦)がドイツで支持される理由-前編

2015 / 08 / 30特集コラム


ドイツのパン屋でよく目にするのが“Dinkel(ディンケル)“と名がつくパン。オーガニックに限らず一般のパン屋でも必ずと言っていいほど売られています。初めて見たときは、黒ビールを意味する“Dunkel(ドゥンケル)”と勘違いをしてビールでも入っているのかなと思っていました。もちろんそれは間違いだったわけですが。

このディンケル、一般に流通している小麦(以下、普通小麦)の原種にあたり、日本では“スペルト小麦”という名前で知られています。美容食材として紹介される機会も増えてきているので、耳にしたことがある人も多いのではないでしょうか。

古代穀物「ディンケル」・日本でも注目のスペルト小麦がドイツで支持されているワケ

「ALNATURA」のプライベートブランド商品 ディンケルのプレッツェルスナック、クッキー、パスタ、クランチ

ドイツでは小麦製品全般でディンケルを使用したものが多く、オーガニック商品ではその傾向はより顕著になります。例えば全国展開しているオーガニックスーパー「ALNATURA」の品揃えをホームページで検索してみると、普通小麦の関連商品は3品であったのに対して、ディンケルでは66品も表示されました。その種類はパン、クッキー、クラッカー、フレーク、ミューズリー、パスタ、穀物ミルクなど多種多様でした。

なぜここまでディンケルが多く用いられているのか、その理由を知るために、まずはディンケルとはどのような穀物なのか調べてみました。

■古代からの特徴を受け継ぐ伝統品種
古い穀物の品種であるスペルト穀物に属しており、スペルト(もみがら)の名の通り、硬いもみがら層に覆われているのが特徴です。8000年以上前からエジプト人によって栽培され、その後、中欧や北欧に広く伝わったとされています。ドイツでは紀元後500年頃から栽培が始まり、18世紀に至るまで重要な取引穀物の一つでした。

■オーガニック栽培に適している
多収を目的に品種改良が加えられ現在の形となった普通小麦と比べ、ディンケルは古くからの性質や特徴をそのまま残しています。その性質が“頑丈”・“要求が少ない”と表されるように、天候や環境の変化に強く、肥料の影響を受けにくいという特徴があります。そのため荒れた土地での栽培にも適応し、化学肥料を必要としないため、オーガニック栽培に適している作物と言われています。

■ミネラルやビタミン、タンパク質を普通小麦より多く含む
普通小麦に比べ、より多くの栄養素を含んでいます。鉄やマグネシウムなどのミネラルに加え、亜鉛や銅などの微量元素。ビタミンについてはB1・B2・B3・B6・Eなど。タンパク質に関してはリジン以外の必須アミノ酸全てにおいて普通小麦よりも高い数値を示します。

■風味が良い
普通小麦に比べて薫り高く、しっかりとした味わいがあると言われています。その用途は普通小麦と同様で、様々な小麦製品に用いられています。また、ディンケルの未成熟な種子を熟成させて風味を際立たせた「Gruenkern(緑の種)」は粒や小麦粉の状態で販売され、ディンケルと同様に好まれているようです。

個人的な感想ですが、ディンケルパンは小麦特有の香ばしい風味が強いように感じました。

このように特徴を並べてみると、オーガニック栽培に向いていることや栄養価が高いことなど、健康志向の消費者にとってディンケルを選択するメリットは大きいようです。また、日本で在来種に注目が集まっているように、その土地で昔から栽培されてきた作物であることは大きな意味があるのでしょう。

後編につづく)

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神木桃子(こうぎももこ)プロフィール

オーガニックとローカルをテーマに食の魅力を探求し続けるレポーター。
オーガニック専門店を運営する会社にて販売・バイヤー職に、地域産品のコンサルや販売を行う会社にて営業・バイヤー職に従事し、商品企画から流通、販売まで幅広い経験を積む。
2014年秋からドイツ在住。