世界で広がるプラスチックフリーへの動き。EUが2030年までにEU市場における全てのプラスチック包装をリユース・リサイクル可能とする目標を掲げたこともあり、ドイツの消費者の中でもプラスチックフリーへの関心は年々高まっています。

そんな中、ドイツ各地に次々とオープンしているのが、プラスチックごみを出さない“プラスチックフリー”の専門店です。オーガニックやローカルを重視しつつ、チェーン展開しているオーガニックスーパーとは一線を画す店づくり。そんなプラスチックフリーショップのひとつを今回はご紹介します。

訪問したのは私の住むハンブルクに昨年、初めてオープンしたプラスチックフリーショップの「Stückgut」。クラウドファンディングで資金調達し、オーナー自ら物件をリノベーションしたという店内は小さなカフェコーナーもあり広々としています。量り売りの食品だけでなく、プラスチックを使っていない生活雑貨や日用品までそろうのが特徴です。

食品はビネガーやスパイスなどの調味料から豆や穀物、お菓子まで150品目以上がオーガニックでそろいます。プライスカードに書かれたメーカー名を見るとオーガニックスーパーでもお馴染みの会社ばかり。パッケージングされていない分、価格が割安になっている場合がほとんどです。近隣地域から届くパンや野菜も裸売り。牛乳やヨーグルトなど量り売りが難しい冷蔵品はリターナブル容器入り商品を扱うことで対応しています。

生活用品コーナーでは竹製の歯ブラシ、タブレット状の歯磨き粉、1ロールから購入できるトイレットペーパーなどが並びます。プラスチックフリーだとこういう商品形態、販売形態になるのだと改めて発見させられます。

水筒や弁当箱、タッパーなど普段見慣れた生活用品も見方を変えるとプラスチックフリーの生活を支える大事なアイテム。ロスのリスクがない雑貨も扱うことで利益を確保する狙いもあるのでしょう。

オーガニックスーパーでも量り売りコーナーが設置されている場合がありますが、多くは使い捨ての紙袋が用意されています。しかしこの店では有料の容器を購入するか自分で持参するかの二択のみ。レジにある量りで空の容器を計量してから自分が欲しいものを入れ、再度軽量します。私が訪問したときも2~3人はガラス製の容器を持参していました。

ドイツ自然保護連盟・NABU(Naturschutzbund Deutschland e. V.)の調査(2014年)によると回答者の76%が未包装の果物や野菜を買いたいと考えており、85%がプラスチックゴミを減らすために買い物袋を持参しているということでした。

ドイツの場合、屋外市場で野菜や果物をそのまま裸で購入し、自分が持参した袋に入れて持ち帰るのは当たり前。スーパーマーケットでは買い物袋は有料。そんな土壌があるからこそ自分で袋や容器を持参して買い物をすることに抵抗感は少ないのでしょう。

この店を訪問した際に印象的だったのが、持参した容器で液体洗剤を買おうとしたとき。スタッフのひとりがやり方を教えてくれたのですが、ポンプが重そうで、押しながら「プラスチックフリートレーニングね!」と楽しそうに話していました。

“プラスチックフリー”や“オーガニック”という言葉が堅苦しく感じる人もいるかもしれません。しかし見方を変えれば自分が心地よくなるもの、そして生活を楽しくするものにもなりえます。

気候や習慣が異なる日本でここまで徹底した店づくりをするのは難しいかもしれません。しかし利便性を追求し資源を大量に消費する時代は終わりました。世界が持続性のある消費行動へと舵を切る中、日本も今の消費スタイルを見直す時期に来ています。

まずは取り入れやすいところから。プラスチックフリーショップは品揃えや販売形態など小売りの現場に活かせるアイディアが満載です。今回のコラムが少しでも変わるきっかけになれば、そう願っています。

この記事を書いた人

神木桃子(こうぎももこ)

ドイツ在住オーガニックライター
オーガニック専門店を運営する会社での販売・バイヤー職、地域産品のコンサルタントや販売を行う会社での営業・バイヤー職を経て、2014年秋よりドイツに移住。商品企画から流通、販売まで幅広い経験を積んだエキスパートならではの視点で、ドイツのオーガニック&サステナブル情報を発信している。3歳になる娘を子育て中。

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